MATERIAL
AND
PROCESS

オルタナサーフワックスは、ミツバチがつくるビーズワックス(蜜蝋)、松脂(まつやに)由来の樹脂、大豆ワックス、ヤシ油、MCTオイル、石灰石からとれる炭酸カルシウムでできています。これらの配合を変えることで、あらゆる水温でのライディングを可能にする4種類のトップコートと、ベースコートをつくっています。サーフワックスをつくることは、松山油脂にとって初めての試みでしたが、石けんの原料についての知識と製造技術、経験をもとに、工程と作業方法を組み上げていきました。

製造にあたり、まずは器具に水が付着していないことを確認します。その後、不純物を取り除いた精製ヤシ油や蜜蝋など、天然由来原料のなかでも製品のベースとなる原料を溶解釜に投入します。最初に投入する原料は、あらかじめ加温しておきます。一度に大量の原料を投入すると、溶解が滞り、大きな塊になってしまいます。すべてが均一に混ざるよう、攪拌のスムーズさを目で見て確かめ、そのつど投入量を決めます。天然由来原料を使うための欠かせないひと手間です。

釜に熱を加えて温度を上げていきます。原料が溶けなかったり混ざらなかったりすると、適度な硬さやグリップ力が得られません。沈まない程度の力で釜の中の攪拌を続け、すべての原料をバランスよく分散させます。円筒形の枠に液状のワックスを充填し、そのまま熱を冷ましていきます。これは「枠練り製法」という石けんのつくり方と同じ。松山油脂が受け継いできた製法です。枠練り製法があったからこそ、私たちはサーフワックスの製品化に踏みきりました。しかし、サーフワックスと石けんでは、当然ながら性質はまったく異なります。

例えば、円筒形の枠(筒)に流し込むと、石けんは外側から徐々に冷え、中心に向かって固まっていきます。ところが、サーフワックスを同じように冷やすと、中心部に穴が開き、ドーナツのようになってしまうのです。ワックスは液体から固体になるとき体積が大きく収縮します。そのため、外側から固まっていくと中央部にはワックスが残らず、穴が開いてしまうのです。最終的には充填の工夫により穴開きを減らすことができましたが、ゼロではないので、まだまだ改善の余地があります。

固化したワックスは長さ約45cmの円柱で、これを加温して少し軟らかくした後、ステンレス鋼線で1本につき約20個に小切りします。そしてロゴを打刻するのですが、ここでもトラブルが発生しました。サーフワックスのグリップ力で、刻印が食い込んでしまうのです。型離れが悪く、ロゴが崩れてしまいます。サーフワックスの硬さは5種類、それぞれ文字の崩れ方や取り扱いも変わります。作業負担を考えあわせながら工程・作業を組み上げ、処方の最終決定後、すぐに製造から刻印までできるよう準備しました。

打刻、包装が終わると、最終試験に入ります。バリや傷、ゴミや異物の混入の検査、色調が標準品と同等の淡黄色であること、著しい原料臭がないことの確認、そして塗布試験。すべてをクリアしてはじめて出荷可能になります。これは、松山油脂が日頃製造している石けんやスキンケア製品とまったく同じ手順です。安定した品質と、長く愛用できる価格を両立している。松山油脂がオルタナサーフワックスを製品化した意味は、環境への配慮に加え、ここにもあると考えています。