2025.01.27
オルタナと環境
「サーフィンは地球に押してもらうスポーツだよね」。昔友人にそう言われたことがある。彼はサーファーではなかったが、的を射ている。地球や自然を舞台にするスポーツはほかにもたくさんある。ヨット、ハンググライダー、カヌー、クライミング、スキー、スノーボードなど、挙げ出したらきりがない。だが「地球に押してもらう」という言い方がしっくりくるのはサーフィンだけだと思う。ボードの上に裸足で乗るだけの極めてシンプルな装備で、地球の力を受け止める。反対意見もあるだろう。サーフィンを日本語で言うと「波乗り」だし、「良いライディングだったね」と褒められることはあっても「良い波に押されてたね」とは言われない。波という言葉を使うなら「波にもまれてたね」とか「飲まれてたね」である。地球に押されるのではなく、自分の力で、自分の技術で波を乗りこなしてこそサーフィン、それが正しい定義なのかもしれない。しかし、である。初めて波に乗れた時、初めてボードに立てたときのことを思い出してほしい。頭が真っ白になり、浮いているような、飛んでいるような、とにかく気持ちの良いあの瞬間。アドレナリンが出まくって、ほかのことが全部どうでもよくなったあの瞬間だけは、間違いなく地球に押されていたと思う。サーフィンほどシンプルに無防備に、地球と自然と一体になれるスポーツは他にない。だからサーファーは、自然や環境への強い意識がDNAレベルで刷り込まれる。少なくとも私はそう信じている。オルタナは、石けんとスキンケア製品のメーカーである松山油脂が、石油由来の原料を使わずにつくったサーフワックスである。イベントや営業先のサーフショップで「パラフィンを使っていないサーフワックス」と伝えるだけで、意味を理解し、興味を示し、前向きに受け入れてくれる。サーファーの環境意識の高さがよくわかる。だが、世界中すべてのサーファーがオルタナサーフワックスを使っても、化石資源の枯渇を止めることはできないだろう。なぜなら、私たちの日々の暮らしに欠かせない、物流や電力などのインフラ、鉄やプラスチックなどさまざまな物資は、今も一定量の化石資源を必要としているからだ。では、なぜ私たちは続けるのか。ひとつは、続けてさえいれば小さくても確実に効果が出せるから、そしてもうひとつは、製品に込めた思いを、サーフィンを通して世界中に広げていけるからだ。大切なのはどれだけ多くの人に思いを伝えていけるか、である。サーファーは世界中にいて、サーフィンという共通言語でつながっている。初めて会った人でも、サーフィンがあればすぐにコミュニケーションをとることができ、仲間意識が生まれる。そんな幸福な人たちの、共通の日用品ともいえるサーフワックスを通して、彼ら彼女らのコミュニティの内外にオルタナの思いを伝え広げていくことが、必ず地球の未来につながると信じ、私たちは今日もワックスをつくり続ける。